私がいま、博論で「女性の昇進意欲」を研究する理由
2026年5月8日
社会人博士大学院生として3年目となり(最終年)、いよいよ大詰めの時期となりました。
博士課程では、博士論文(博論)を書くために複数の研究を同時進行で進めていきます(私の場合は、ぜんぶで6つの研究を進めています)。博士号取得のためには、修了前までに大学が基準を設けるある一定レベル以上の学会での査読論文が複数採択される必要性があり、学会発表や学内発表もしなければならず、不慣れな私にとっては本当にてんてこまいな日々です。しかも平日は仕事をしていますので、週末の土日をフル稼働している、という状態です。
さて、そのようにして取り組んでいる私の博論のテーマは「女性の昇進意欲」についてです。今回はなぜ、これをテーマとして取り上げたのかを書き残しておきたいと思います。
とりわけ日本において、女性管理職比率の低さが諸外国として劣後していることは、多くの調査で明らかになっています(たとえば、2025年の労働政策研究・研究機構調べによると、日本14.6%に対してアメリカ42.6%)。昇進に男女間のギャップがあることの理由としては、組織の慣行(異動経験や出張の多さが昇進に繋がるなど)など、さまざまなことが指摘されてきました。
その中でひとつ、注目すべき点があります。
昇進を促すひとつの要因として、「昇進したいという意欲」が挙げられます。そして、とりわけ日本では、この昇進意欲が、男性よりも女性のほうが低いということも、複数の学術調査で取り上げられてきたのです。
なぜ、日本の女性の「昇進したいという意欲」は低いのか。
いくら組織の制度や施策といった目に見える部分が変わっても、この「意欲」の部分も変わらなければ、女性の昇進は進まないのではないか。
私は営業部女子課を長年運営し、なかでも営業といった直接部門の「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」に多く関わってきました。また、社内&社外取締役としても13年以上、サクセッション(後継育成)や人的ガバナンスに携わってきました。現場側からも経営側からも、また社外側からも、様々な組織を見る中で、この問題意識がどんどん膨らんでいきました。
「意欲」と聞くと、「持つか、持たないか」という、本人の気持ちの問題で、努力すればどうにかなること、のように思われるかもしれませんが、実は、そうではありません。周囲、たとえば組織の風土や上司のリーダーシップなど、さまざまな組織力学が相互作用し、意欲に影響を与えます。ここに、意欲を巡るダイナミックなメカニズムがあります。
私の研究領域は、心理学、つまり「人のこころを科学する」という分野です。そこで、心理学の観点から、このメカニズムを解明したいと考えました。これまでのように、実務や経験則だけに頼るのではなく、科学的な観点からこの問題を考えることで、エビデンスをもとにした貢献ができるのではないか。企業の施策に還元し、よりよい経営に貢献したいと思いました。そこから博士号取得に向けた悪戦苦闘が始まったというわけです。
とはいえ、研究は仮説通りに進むものではありません。論文を完成させても、すべてが採択されるわけでもありません。実際、査読論文の採択率は数%~30%台とのことで、それ以外は不採択となります。採択される場合も、結果が出るまで1年くらいかかります。
言うは易し、行うは難し。博士研究における異次元の大変さに、へとへとな毎日で、自分の研究力の浅さに落ち込むことも多いのですが、それでも良い結果をみなさまに報告できますよう、日々精進です。
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