【学会発表】「女性の昇進およびその意欲に関する研究の展望」学会発表しました
2025年12月10日

私が社会人向け大学院である、筑波大学大学院の門を2017年にたたいてから8年。修士課程を終え、いまは「博士後期課程」に在籍しています。そこで取り組んでいる研究について、9月に開催された「産業・組織心理学会」で発表を行ってきましたので、ここで少しご報告します。
私が研究している分野は、「産業・組織心理学」や「キャリア心理学」とよばれるものです。働く人や組織の在り方に対し、心理学の知見をもとに、科学的にアプローチしています。もう少しかみ砕いて言うと、「人の心」「組織の行動特性」「組織風土」といったような、目に見えないものをあえてデータ分析し、その結果得られたもので、社会課題の解決に貢献していくことを目指しています。
その中で、私が現在取り組んでいる博士論文のテーマはかなりおおざっぱにいうと「女性の昇進および昇進意欲は、どのような要素があれば高まるのか?(あるいは抑制されるのか?)」というものです。
組織の中で女性が上級管理職にステップアップしていく際、どのような環境や上司とのかかわりが昇進に繋がったり、当事者の気持ちを後押ししたりするのか。逆に、どのようなことが機会を奪い、気持ちを後ろ向きにさせるのか、といったことについて研究しています。
実はこのテーマでは、過去に多くの人たちが研究に取り組んでおり、いわゆる「先行研究」とよばれる、膨大な量の論文がすでに存在します。そこで私はこの学会発表では、2000年以降に発行された、37件の学術論文(査読付き論文)を整理しました。ここでは、それらをレビューした結果を発表しました。
導き出された結果については、制約があり、ここで詳しく記すことができないのですが、そのかわりに、私がどんな問題意識を持って、なぜこのテーマに取り組んでいるかを記しておきます。
そこには、私自身の経験があります。
私はかつて、民間の上場企業(後に、親会社によるTOBで非上場化)に勤務していました。その会社で活躍している人たちは、従業員層には男女ともに多くいたのですが、上位職になるほど女性が少なかったです。当時、上場企業の女性役員比率は1%台という時代でした。常勤の取締役兼部長職として、私はいわゆる「初の女性役員」でした。
並行して、女性営業職のコミュニティ「営業部女子課」を運営するうち、徐々に課長や部長職に就任する女性が営業部門で出てきました。本当に喜ばしいことでした。環境や社会が変化する中で、当事者としても、また周囲でも、リアルタイムに様々なことを体感してきました。その経験の延長線上に、いま取り組んでいる研究があります。
女性活躍やDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン。多様性、公平性、包括性)の機運の高まりから、間接部門(事務系など)に女性の配置は進みました。しかし多くの企業では営業や製造など「直接部門」の女性リーダーは少ないという課題が今も残っています。そこで博士論文では、「女性の昇進およびその意欲」について、特に営業部門の女性に焦点を当てて取り組んでいます。
そしてここからは、学会発表をして、私自身が感じたことです。
長年、社会の中で働いて来た私にとって、学問の場に身を置き、学会で研究内容を発表することは、新しいチャレンジです。しかも普段の仕事と両立させながら、研究活動をしなければなりません。そしてその研究というのは非常に奥深く、地道に続けても結果が出ないこともあります。ある研究では半年以上、ずっと苦しんでいました。
そのような中で、学会発表をしたところ、ベテランの先生方から意義のあるコメントやフィードバック、ご助言をいただきました。「非常に重要な研究だ」という激励の言葉もいただいて、とても励みになりました。「いま取り組んでいる研究は社会課題の解決になる、意義がある」と感じられることは、モチベーションを大いに上げてくれました。
こうして研究の成果を多くの人の前で発表し、直接、聞いてもらえることは本当にいいものだと痛感しました。
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