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「とりあえずYES」だった私が「時にはNO」に転じた理由

2021年5月22日

※本記事は2021年5月22日当時の、日経xwoman Terraceアンバサダーブログに投稿された内容です。
 日経xwoman Terrace(アンバサダーブログ)のサービス終了(2025年6月末予定)に伴い移転された内容です。

私はずっと「とりあえずYES」の女だった。
営業職だったということもあり、お客様には決して「NO」と言わず、とりあえず「はい!」と返答してから、どうしようか……と考える。それが当たり前だった。
一度お断りしてしまったら、次にチャンスは来ないと思っていたから。
もう相談などしてもらえないと思っていたから。
だから「NO」などあり得なかった。ずっと。

この考え方は私の信念であると同時に、私自身を支えてくれた柱でもあったと思う。
「期待には全力で応える」ことこそが誠意であり、常に正しいと考えて来た。
相談されたことに対しては、どんな内容であっても、全力投球してきた。
そうすることで「誰かの役に立っている」「何かに貢献している」というやりがいを感じ、ほんの小さなことでも、誰かを救っているという実感を得られたからだと思う。
ちなみに私は、ストレングスファインダー(自分の強みを可視化してくれる、診断アセスメントツール)や、キャリアアンカー(キャリアで著名なシャイン博士の、キャリア上での中心的価値観)といった尺度や物差しに自分を当てはめると、いつも出て来るのが「奉仕・社会貢献心(Service/Dedication to a Cause)」というキーワード。
要するに「自分以外の誰かの役に立っている」ことに激しくモチベーションを感じ、それを実感することに執念を燃やすタイプなのだ。

ところが最近になって「あえてお断りする」ことも時には必要だし、そういうことがあってもいいと思えるようになってきた。そして実際、断った。

もちろん、ご縁があった相手には、誠心誠意、尽くしたい。
けれど場合によっては、意図しないところで「ミスマッチ」が起きる場合もあると、気づくようになってきたからだ。
例えば、相手の方が私をよくご存じない場合。
相談してくれるのはとても嬉しいのだけれど、それが私の「強み」とはかけ離れている場合、わたし自身も「しっかり成果を出せる」という返事をすることができない。
そうすると、相手が求めるモノと、こちらが提示することがかみ合わず、堂々巡りになってしまう。そんな時、私の頭には、別の人の顔が浮かんでいる。
「この件なら、あの人の方が適任なのではないか……」というように。
この場合、私よりも成果を出せる専門家や、よりフィットする次世代の人材がいるはずなのだ。

だから、ご縁はとてもとてもうれしく、有難いのだけれど、この数か月だけで「あえてお断り」するということが数回、あった。

そのかわり「これは私でないとだめだ」「私こそが結果にコミットできる」と自信を持って言えるものには、どんなに忙しくても全力で応える、という気持ちが、以前より一層強くなったように感じる。
そしてこれは不思議なことだが「お断り」をしたことによって、むしろ関係が深まった人や組織がある。中途半端な状態で引き受けてしまうよりも、お互いに全力を出し合える態勢や分野を見極めることこそが「コミットする」ことであり、そこに誠実さも宿るのではないかと感じ始めている。

この気持ちの変化には、私自身が数か月前に大怪我をしたことも影響しているのかもしれない。重症な事故をきっかけに、「人生には限りがある。時間は無限ではない」と身をもって知った。
その結果「限られた時間の中で、本当に意義あることに身を投じよう」と考え、行動するようになったのかもしれないと思う。

「時には断る」こと。
そんなこと、ずっと前から当たり前にやっているという人も大勢いるだろう。
しかし「断らない」ことで、自分を支え、前に進み続けている人もいると思う。
私は長い間、後者だった。
時には「NO」と言えるようになったことは、私にとって非常に大きな心の変化だった。

上半身は医療器具に固定されながらも、小さな里山を散歩できるレベルにまで回復してきました。リハビリ頑張ります

※本記事は2021年5月22日当時の、日経xwoman Terraceアンバサダーブログに投稿された内容です。
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