夜の道路で徘徊するお年寄りに遭遇。 いま、私たちにできること。心に止めておきたいこと。
2021年12月18日
※本記事は2021年12月18日当時の、日経xwoman Terraceアンバサダーブログに投稿された内容です。
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本記事にある、「地域包括支援センター」を知っているだけでも、将来助けられることがある。
というのは、この1年だけで2回も、考えさせられる、ある経験をしたからだ。
車が行き交う夜の道路で、徘徊する(と思われる)お年寄りを見かけて声をかけたのだ。
決してひとごとではないこの出来事を記しておきたいと思う。
1回目は、4月のある日。夜10時ごろだっただろうか。
車が高速で行き交う道路に、背中を丸めて歩く高齢の女性がいた。冷たい風が肌を刺す寒い夜。
それなのに、コートもジャンパーも着ずに、カーディガンだけを羽織って、時折車道にはみだしながら、杖をついて歩いている。どう考えても、危ない。
運転中だった私たち夫婦は、ともに心配して、車を停めた。
「おばあちゃん、大丈夫ですか?」と尋ねると、おばあちゃんは迷子になってしまったという。日が暮れる前から、ずっと歩き続けているらしい。
すぐに警察に連絡して、保護してもらった。聞けば、なんと捜索願が出ていたという。
さぞかしご家族は心配しただろう。想像するだけで、胸が張り裂けそうになった。
私たち夫婦が思い切って車を止めて声をかけたのは正解だったと胸をなで下ろした。
そして2回目は、12月の、つい1週間前だ。再び、寒い夜であった。あのときと同じように、交通量の多い街道の脇を、おばあちゃんがおぼつかない足取りで歩いている。「もしや……」
私はあの時のことを思い出し、嫌な予感がして、反対車線ではあったが車を停めて歩み寄った。尋ねると、やはり迷子になってどこを歩いているかわからなくなってしまったと言う。今回もすぐに警察に連絡して、警察の方に保護してもらった。
無事で本当に良かったと、心から安堵した。
警視庁によると、令和2年の全国の行方不明者のうち、認知症またはその疑いによるものはおよそ1万7000人もいるそうだ。徘徊してそのまま見つからないことや、徘徊中に事故に遭うリスクも高いとも言われている。
今回、役に立ったのは、夜の道路を歩くおばあちゃんを見た時に「もしかしたら……」とすぐに想像できたことだ。
私の場合はたまたま、公認心理師(心理学の国家資格)でもあり、大学院で老年心理学を学んだ経験から、認知症の基礎知識(記憶障害などの中核症状と、周辺症状など、夕暮れ症候群も)があったので、ピンと来た。
一方の夫は心理学とは無縁だが、知人のSNSで、迷子になった高齢者の方を助けた投稿を偶然見ており、今回の行動に至ったという。
いずれも、何らかの形で「知っている」「ほんの少しの知識を持っている」ことが、事態を推測し、人を助ける武器になったと思う。
超高齢社会に突入し、認知症や介護の問題は、決してひとごとではない。
いま、認知症にかかっている人の割合は、高齢者の7人に1人にまで達しているとも言われており、10年以内には、5人に1人にまで増えると予想されている。
今は両親が元気でも、いずれ介護する側になる可能性がある。
そして私自身もいつかは必ず、地域社会に助けられる時期がやってくる。
だからこそ今のうちから、何かあった時に協力し合える、正しい知識を持ち、
今自分にできることで、誰かの役に立ちたいと思う。

※本記事は2021年12月18日当時の、日経xwoman Terraceアンバサダーブログに投稿された内容です。
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