10年間伴走したプロジェクト「エイジョカレッジ」最終章 新たなステージへ——。私の結論「エイジョとは、バリュークリエイターである」。
2025年3月10日

私が審査委員として毎年関わってきた「新世代エイジョカレッジ」(通称エイカレ、株式会社チェンジウェーブグループ主催、経済産業省後援)。
これは営業女性が、それぞれ所属する企業における課題を発見し、解決のために自ら挑戦することで、変革を体験しようという取り組みです。
具体的には、これまで「当たり前」とされてきた営業上の古い習慣を打ち破るため、自社での実証実験を行うことで、新しいビジネスモデルや働き方などを提案します。
今年も多くの企業が参加し、各社で実験が行われました。
そして去る2月、それらの中から選ばれたファイナリストが成果を競い合う「エイカレサミット」が開かれました。
各企業の営業女性(通称:エイジョ)チームが、どんな課題を見つけ、解決するためにどんなプロジェクトを行ったのか。数カ月をかけた実証実験の結果や成果をプレゼンしました。
エイカレについて
https://eijyo.com/
今年の様子はこちら
EXPERMENTS | 実証実験 | エイカレ – 新世代エイジョカレッジ
毎回参加するたびに「そうか、こんな『古い慣習』が営業に残っていて、こんな新たな取り組みができるのか!」と感心させられることが非常に多いのです。
そのエイカレが、歴史にいったん幕を下ろし、
新たなステージに歩を進めることになりました。
2014年にスタートしてから11年。
参加した企業は165社、「エイジョ」は実に1016人。
営業女性の活躍は、「営業部女子課」を継続してきた私のライフワークでもあります。
エイカレでは、志を同じくする人たちから、多くの感動と勇気をいただき、参加者の挑戦に感銘を受け続け、営業女子の可能性を無限に感じることができました。
そこで今回、これまでのエイジョカレッジではどのような実証実験があったのか、11年を振り返ってみたいと思います。詳しくは、代表の佐々木裕子さんが当日、解説してくださったので、一部のみ紹介します。
1.「労働時間の当たり前」を壊す実証実験
代表例がキリンさんの「なりキリンママ・パパ」や、リコージャパンさんの「プレミアムエブリデイ」。2015~2020年ごろ、営業部では残業が常態化していましたが「労働時間を削減しても生産性や営業成果はちゃんとキープできる」ということに挑戦し、定量的に実証したプロジェクトでした。
2.「一人担当営業の当たり前」を壊す実証実験
属人性が強い営業の世界。たった一人で担当先を抱え込んでいると、万が一、ライフイベントなどで働き方が変化した場合、顧客対応に支障が出てしまいます。そこで、営業活動に「一人営業」ではなく「チーム営業」を導入することなどによって、生産性や成果を出すというモデルが生み出されました。中外製薬さんの「おしながき営業」、富士通マーケティングさん「コンシェルジュ営業」が代表例です。
3.「働く場所の当たり前」を壊す実証実験
転居を伴う転勤や異動という当たり前を壊したのは、三菱地所さんの「転居なしの転勤」。当時はまだコロナ禍が広がる前で、オンラインで働くこと自体がメジャーではなく、時代を先取りした画期的な提案でした。
4.「スキルアップの当たり前」をアップデートする実証実験
イーライリリーさんの「カスタMyドクター」など、顧客に合わせた営業手法の創出などがありました。
5.「ライフキャリアの当たり前」に挑戦する実証実験
中外製薬さんの「不妊治療言いにくい職場を壊す」など、これまでタブーとされてきた領域に踏み込んだ実験が行われました。
6.「管理職の当たり前」を壊す実証実験
三井住友海上さんの「マネチャレ!」は、管理職を疑似体験してみるというもの。富士通マーケティングさんの「フレキシブルマネジャー」は、マネジャー2人体制という新たなモデルを生み出しました。
7.「業界の慣習だから当たり前」を壊す実証実験
スタッフサービスさんの、派遣を開始する際に同行しない「派遣開始同行ゼロチャレンジ」など、業界では良いこととして慣習化されてきた古いモデルをあえて破壊するという取り組みがありました。
◆
さて、私が審査委員をつとめるようになってから10年間、エイカレに伴走する中で、ずっと考えてきたことがあります。
エイジョ、つまり営業女子とは一体何者なのか? ということです。
営業女子の真ん中にあるモノ、神髄は何なのか。
どんなパワーや価値を秘めて、この社会に存在しているのかということです。
まさにこのエイカレを通じて、私はひとつの結論にたどり着くことができました。
それは、エイジョとは「バリュークリエイター」であるということです。
営業担当は、毎日、毎月、毎年、予算に翻弄され、社外の顧客や取引先、社内の人間関係に疲弊し、ストレスも少なくない仕事です。
しかしその仕事は、企業のフロントライン(直接部門)として、日々の財務的価値(利益)を生み出しています。
それだけではありません。
目には見えない「非財務価値」も創り出しているのです。
新しい働き方。新しい勝ち方、利益の生み方。新しい価値観。
将来の、社会の可能性を拓く部門です。
つまり、企業のアップサイドポテンシャルを切り拓く「風穴」のような存在であるのです。
そんなことを、エイジョカレッジの最終章に感じました。
ちなみに、エイカレはバージョンアップして、別の形で継続されるそうです!
私はいま働きながら、大学院の博士課程に所属しながら(社会人ドクターというもの)、営業女性の昇進に関する研究に取り組んでいます。
10年に渡り、エイカレから受け取った学びと刺激を糧として、各方面にアンテナを立てながら、社会に還元できる成果を得られるよう、研究に励んでいくつもりです。
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