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登山日記:キリマンジャロ編

2016年1月21日

今年1月、悲願のキリマンジャロ(アフリカ、タンザニア)に行ってきました。この期間、インターネットは通じなかったものの、毎日個人日記を綴っていたので、その記録を備忘録として残しておきます。すべて当時の原文です。
なお、これらは極めて主観的な備忘録であり、私の痛恨の気持ちが全面に押し出されていますが、素晴らしい山であることに変わりはないので一人の個人経験としてお読みいただければ幸いです。
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登山1日目:
ゲートからマンダラハット、ハイキング。ジャングル道、ガイドとひたすらお喋り。同じ部屋は、アイアンマンのトムクルーズ似のアイルランド人弁護士と、アコンカグアに昨年登頂したドイツ人シェフ。世界の山で話は盛り上がる。凄い冬靴を持っていたので、聞いたら次なるデスティネーションは、8000m級チョーオユー、そしてエベレストだって!私の山の目標に偉大なる刺激を与えたのは言うまでもない。
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登山2日目
マンダラハットからホロンボハットまで、高低差1000m。コースタイムより一時間早く到着。いまだキリマンジャロはガスに包まれて入りるが、アフリカを彷彿させる、ジャングルから抜け出す変化を感じる山道が楽しい。
激しいホームシックと恐ろしいほどの暇時間。しょうがないから新しいビジネス構想タイムや現在の懸念を整理する時間、スタート。
同じ部屋の看護師のスウェーデン人に、ウフルピーク話を聞いて興奮。
夜は瞬く星が濁りなく美しく、流れ星も見えたから、目を閉じながら将来の想いを夜空に託してみる。
登山3日目:
高度順応日。本来は300mくらいしか登らないところ、ガイドと交渉してサドまで行ってもらう。
4300m、高低差600m。体調はすこぶる順調。キナバル(東南アジアの最高峰、5年前に登った)のように、頭も痛くないし吐き気もなし。だが、高度を感じ、いつもよりも息が上がったかな。
隣の5000m峰マウェンジ山が青空にくっきりと存在感を示している。
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登山4日目:
軽い頭痛あるものの、水分補給で体調は回復。3700mのホロンボから1000m標高上げて4700mキボハットへ。小雨のスタート。これぞアフリカを彷彿させる砂漠地帯をゆっくり標高稼ぎ、トレッキングの楽しさを噛み締める。キリマンジャロはいまだ雲の中。
最後の4500m辺りから、雨はヒョウに変わり、激しく顔と体を打ち付ける。寒い!苦しい!風冷たすぎ!前見えない嵐!顔痛い!
息が切れて、何度も何度も足が止まる遅さ。
だって、ここは標高4700mだよ!
凄い塊の荷物を頭に背負うポーターたちは悠々と私を追いぬかす(笑)
なんていう山の練習なんだ!とゼーゼー喘いでたら、キボハット、最悪な吹雪の中、到着。100人中、あの山ドイツ人についで二番目の到着。
昼寝の後、起きたら激しい頭痛と吐き気が込み上げる。やっぱり来たよ、恐怖の高山病。あー、気持ち悪い!さすが高所、水分補給に余念がない。同時に膀胱が破裂しそうな感覚も。
明日は夜2300時に出発。
山小屋はスシズメ状態。ドイツ、イギリス、中国、インド、フランス、、、スワヒリ語が公用語だけど、もはや何語かわからない(笑)
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登山5日目:
夜2300から真っ暗な中、ギルマンズポイント5685mを目指す。体調、最悪。登山道は難所はないが、とにかく高山病がこんなにも体力と気力を奪うものなのかと、驚きと哀しさと、悔しさが私の脳裏を突き刺していく。やっぱり私は高度の高山病を体質的に持つ人らしい涙。
嘔吐しながら、ふと考える。
こんなにも気持ち悪くても、なぜ山に登るのか?
答えは、永遠に出ないよね、きっと。
気候は雨からヒョウへ。薄く雪化粧したキリマンジャロの壁をアフリカ最高峰に向かって足を前に出すが、止まらない嘔吐が邪魔して、弱すぎる自分を全面に押し出している。
そして、吐きまくり進まない私を見かねたガイドが、5800mのウフルピークには貴女を連れていけない、これ以上はその高山病ではデスゾーンになるから、と。一瞬、頭が真っ白になり、何とか私をピークに連れて行ってと泪交じりに懇願するも、甲斐無し。高山病は人によるものだが、私がこんなにも酷い症状が出てしまったこと、今後の登山計画にも影響が出る懸念で、自分自身を恨んだ…。
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そんな中、目下に拡がる厚い雲海から大きな太陽が昇った。ピークを断念せざるを得ない悔し涙なのか。それともアフリカの日の出を拝めた感動の涙なのか。思考も働かない、フッラフラの涙の夜明けを迎えた。
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だから、今回のキリマンジャロ山行、私にとっての登頂は、5685mのギルマンズポイントにしておく。最後までキリマンジャロはガスに包まれて山容をお披露目してくれなかったけど、5000mから奇跡的に拝むことのできたアフリカの日の出と、キリマンジャロの氷河に出逢うことができたのは、感謝だな。
帰りは雄大な砂漠地帯を下山。標高下がると、あの時の絶頂不快な気分が嘘みたいに思えてくる。例のドイツ人と未来の山を語り合い、アコンカグア(南米)、アイランドピーク(ヒマラヤ)への夢は膨らむ一方だ。
※一応、私が到達した5685mも、キリマンジャロでは「登頂」とみなすため、登頂証明書は頂けました。個人目標を最終ピーク5800mにしていたために、悔いが残ったのです。
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登山6日目:
大雨の中、下山。聞けば、サミットを一緒に行ったチェコ人の屈強そうな男性が深夜に倒れてレスキューカーで街の病院に運ばれたらしい。工程が一緒だったドイツ人8人も、登頂できたのは3名のみ。ずっと、ウフルピークに行けなかった悔いが離れなかったけど、少しだけ救われた。
ジャングル道をひたすら下山し、マラングゲートに到着したら、土砂降りの雨で、凄い人の山。
山の食事は美味しいものとはいえず、お腹空いてるのに喉を通らない切なさ。
山の後に、粗悪な現場のホテルは耐えられないから、空港近くのホテルをとってもらった。あ〜熱いシャワー浴びたい!
(日記終了)
≪後記≫
体力的には問題なく、けれども高山病という大きな課題を抱えた、今回の登山行。下山後、痛恨の極みに襲われて、しばらくは茫然としてました。
しかし、悔やんでばかりでもしょうがないので、キリマンジャロコーヒーを飲みながら気持ちを切り替えて。こんなところで絶対に諦めるはずありません!キリマンジャロをもう一度登ることがあるかわかりませんが、次なる世界の山(=ヒマラヤ!)に向かって、トレーニング続けます!!
(今ではこの話、笑い話と化しています。)

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