シンガポールにて
2013年6月9日
月曜日の朝、大学での打ち合わせとレギュラー出演しているラジオ収録をNHKで終えた後、羽田よりシンガポール入り。今回のアジア滞在の目的は、クアラルンプールで開催される世界的な女性会議Global Summit of Womenに出席するためだ。であれば、せっかくだからシンガポールに1泊して知見を拡げようと思ったのがきっかけです。
シンガポールは移民の国。東京都程度の広さしかないこの国は資源もなく、世界遺産があるわけでもない。しかし金融規制を緩和しアジアのハブ化を目指して大胆な観光とビジネス誘致が進み、センターオブアジアという代名詞が出来上がったのは評価すべきかもしれない。
移民大国シンガポール。移住してきた一人の女性とじっくりと話す機会があった。彼女はまだ20代。逢うや否や、その迷いない言葉の話し方、遠い未来を夢想する瞳の輝きを見て、一瞬にして「覚悟を決めた」女性であることがわかった。
彼女の「覚悟」はこんな感じだ。
まず、何のために働いているのか?それは「娘のため、家族のため」だという。これだけならまだ、子を持つ親として私も確かにね~と共感を得る程度に終わるだろうが、彼女の腹の括り方はちょっと違う。一人娘を祖国フィリピンに残し、彼女に高等教育(比では良い教育を受けることがその人生を良くし、良いキャリアを創るそう)を受けさせるためにプライベートスクールに通わせ、かつ大家族を自分ひとりで養っているという。しかも、シングルマザーで。
だから、私は仕事を決して辞められない。I can never give up、と彼女は続ける。
将来は自分たちの家を買って、娘を家族を幸せにさせること。ここで一生懸命働ける環境とボスに感謝し、そこまでは絶対に祖国に帰れないという。
仕事って何のために働いているのだろう。素朴だが本質的な質問に、我が国ならどう答えるだろうか?稼ぐため、自己成長のため、もしくは社会のため、誰かのため。どれも間違っていない崇高な答えではあるが、彼女のように腹を括って祖国の一家のために働くという覚悟に、半端ないレスペクトと美しさと芯の強さを感じずにはいられなかった。
その後、数名の女性にもインタビューさせて頂く機会をもらい、夜は最近シンガポールに移住してきた藤井悠夏さんたちと食事。彼女もリクルートのゼクシ―で培った経験を元にしてベトナムのウエディング事業で活躍し、また「覚悟を決めて」シンガポールに移住してきた大きな期待の星。
正直、私は20代の頃決して人様には言えなかったような人生の苦労もしたほうだと思っている。そして当時は、苦心惨憺なドラマチックな人生など経験しないならそれに越したことはない、と本気で思っていた。
けれど、今は違う。
修羅場を潜り抜けた人生の先に待っているのは、生きていく「覚悟」という萌芽だ。
そしてどんなに崖っぷちの時があったとしても、それを乗り越えるだけの胆力と生命力は、私たち人間には生来備わっているものだとも思っている。(そう思えば、この彼女のように意を決して挑戦して、挫折して、なんて怖くない。けど、凡人にはその挑戦が難しいと感じてしまうのだが)
年を重ねるたびに、新しい世界や考え方を受容する懐が反比例されていくように感じてしまう。けれど、まだまだ知らない世界があるし、私は腹を括れているのか?と自問さえもしたくなった。
昨年アメリカに行った時もビザのために命をかけて結果を出そうと働く日本人たちにお会いしたが、ここ東南アジアにおいて、今の日本では失われてしまったような勢力とサバイバル力のようなものを感じることができました。
覚悟を決めた人は美しい。何故なら、迷いというブレーキが外れているから。
心地よい南の風に吹かれながら、Fullerton Bay HotelからのMarina Bay Sandsの絶景は格別であった。
さて、翌日からはいよいよKLに移動して、サミット参加です!