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「感謝する」ことの本当の意味 ~心が腐りかけた私の一考察~

2021年4月18日

※本記事は2021年4月18日当時の、日経xwoman Terraceアンバサダーブログに投稿された内容です。
 日経xwoman Terrace(アンバサダーブログ)のサービス終了(2025年6月末予定)に伴い移転された内容です。

「ありがとう」と言葉にしたり、人に感謝したりすることは、
人間の「ウェルビイング」に直結し、その人の幸福度を上げる要因になる――。
これはすでに科学的に証明され、広く知られている研究結果だ。

頭では分かっているのに、私たちはつい、逆のことをする。
自分が置かれた環境に不平を言い、暮らしの中の不便をあげつらい、
ネガティブな出来事に直面すると、感謝どころか愚痴を連発、
他人と自分を比較しては嘆いている。

実は、かくいう私も、そんな「感謝とは真逆の日々」を送っていた。
数か月前、不覚にも、これまでの人生で経験のないほどの大怪我をしてしまい入院。
退院したものの、今もリハビリを続ける毎日だ。

「前は当たり前にできていたことができない」
「痛みで目の前のことに集中できない」
「好きな登山もクライミングも無理」
「こんなガマン、いつまで続ければいいの!」……。

叫びだしたくなる気持ちを抑えて何とか生活しても、
楽しそうなSNSなどがふと目に入ると、自分が崩れそうになってしまう。
だからスマホを見ないと決めて、一度も開かない日もたびたびあった。
少しずつ気持ちが落ち着いてきた今、そんな自分を客観的に振り返ると、
「できない」「辛い」というマイナスにばかり目が行って、物事を「減点方式」でとらえていたんだなと気づく。

よく考えてみると、私のすぐ目の前には、身近な「プラス」がたくさんあった。
入院中も、そして退院後の今も、本当にたくさんの人から、体調を気遣う言葉をかけてもらったり、励ましのメールをもらったりした。
その言葉一つ一つ、想い出すだけでありがたくて、今も涙が出てくる。

そして、毎日苦しい中でも
「今日は歩行器を使って、歩けるようになった」
「自力で電車に乗れるようになった」
「痛み止めを卒業した」
「仕事ができるようになった」……。
ほんの少しずつだけど、前に進んできた。

しかも、それらひとつひとつ、家族の支えや、仲間の存在があってこそ、可能だったのだ。そして何よりも、命はこうして守られた。

色々な偶然、人の助けがあったから、幸運にも生きている。
目の前にあることほど、つい見逃してしまうけれど、目を凝らせば「プラス」の宝物がたくさんあふれている。
こうやって「加点方式」で考えるだけで、気持ちはずいぶん変わると思う。

「情けは人のためならず」という言葉がある。
「人に情けをかけるのは、その人のためにならない」と捉えられがちであるが、
本来は「人に情けをかけておけば、巡り巡って自分によい報いが来る」という意味らしい(大辞林より)。

この「情け」を「感謝」に置き換えて考えてみると、いま私が感じていることにとても近くなる気がした。
誰かに感謝することは、巡り巡って、自分を豊かにし、心を支えてくれることだ――。

思わぬ失敗をしたり、つまずいたり。
心が腐りかけることは、誰にでもあると思う。
それでも、その中に「ありがたい」と思えることをほんの少しでも見つけられたら、
「また頑張ろう」と思えるのではないかと感じている。

2月の北アルプス・錫杖岳にて(怪我前)。再び、このような雪山でクライミングができる日を目標に、リハビリ頑張ります。

※本記事は2021年4月18日当時の、日経xwoman Terraceアンバサダーブログに投稿された内容です。
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