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「卒母」と、巣立ちのとき。新たなステージに向けて。

2019年9月12日

※本記事は2019年9月12日当時の、日経xwoman Terraceアンバサダーブログに投稿された内容です。
 日経xwoman Terrace(アンバサダーブログ)のサービス終了(2025年6月末予定)に伴い移転された内容です。

なんてタイムリーなんだろう。記事内の「巣立ち完了」という言葉に導かれて、本ブログを投稿している。

私事ではあるが、息子がついに、社会人として巣立つことになった。
(いろいろと予想外の展開があり、大学院に籍を置きながら、というかたちだが……)しかも親元を離れて名古屋へ。新しい土地でのスタートなのだ。

引っ越しには私も手伝いに行った。
新居に荷物を運び終え「元気で社会人として頑張るんだよ!」。
精いっぱい励まし、息子にエールを送ったつもりだったのだが……
帰路についたとき、とてつもない喪失感、空虚さがこみ上げてきたのだった。

子どもが自ら選んだ道を、全力で応援するのが親の役割だということは分かっている。
もう社会人になるのだから、いつまでも世話を焼くのでなく、
巣立ちの背中を押してあげるのが私の役目。
子どもはいつか親から離れ、失敗しても、辛い目にあっても、
自分の力で立ち上がり、乗り越えていかなければならないのだから……。

それなのに子どもが実際に巣立ってみると、残された母は寂しくて泣いている。
子育てに追われていたあの頃は、あまりにも大変で
「もおーー! 私だって、自分の時間欲しいんですけどーー!」と、何度叫んだことか。
それなのに、いざこうなってみると、喪失感に覆われているのだ。
これってもしかして「空の巣症候群」……?

「空の巣症候群(=empty nest syndrome)」は、
子どもが巣立つとときに残された親がさいなまれる喪失感、空虚さを指している。
私はどうやらそこに陥ってしまったようなのだ。
すると、塞ぎこむ私を見た知人が、こんな風に励ましてくれた。

「今まで22年間、母親業お疲れさまでした。
これからは、自分のために自分の好きな人生を謳歌してね」
この言葉を聞いて、私はホッとして、
今まで背負っていた巨大な荷物を下ろしたような気持になった…。

生涯発達心理学の考え方の中に、「適応する」というプロセスがある。
人生のトランジション(ステージが変わるような出来事)があれば、
最初は戸惑っても、新たな役割に向けて「適応していく」という過程を踏むことで
また生きていける――そんな風に、多くの論文では論じられている。

そうか、私はいま「母」を「卒業」して、
新しい役割に適応していく過程を踏んでいるんだと思えるようになった。
息子を出産したのが21歳の時。私は人生の半分以上において「母」であった。
だから当然、変化に戸惑うし、
これまでの役割からそう簡単にシフトすることもできなかった。

けれど、人生は変化する。
だから私もきっと「母」だけではなく
本来の「自分」へと適応していくステージに来たのだ。

これからはさらに仕事に思い切り精を出し、研究にも精進を重ねたい。
そして趣味の登山も、誰にも気をつかわずに思い切り楽しもう。
子育て期は、いつも「早く帰らなきゃ」と時間ばかりに追われていたけれど
自分のためだけに使えるお金も限られていたけれど
これからは自分の人生を満喫しよう。そんな風に思えるようになって来た。

そして息子のために、いつも世話を焼くばかりの母から
「何かあったらいつでも帰れる場所」としての母になっていきたいと思う。

先週末はゆるゆると八ヶ岳でハイキングしてきました。

※本記事は2019年9月12日当時の、日経xwoman Terraceアンバサダーブログに投稿された内容です。
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